「制作会社と事業会社、結局どっちがいいんだろう・・・。」
職種の方向はなんとなく決まってきたのに、いざ求人を眺めると、今度は会社選びで手が止まりませんか?
面接やエージェントとの面談で「制作会社と事業会社、どちらを希望ですか?」と聞かれることもあります。ここで言葉に詰まってしまう人は、けっこう多いと思います。
僕はこれまで4社で働いてきたのですが、たまたま全部タイプが違いました。制作会社 → 事業会社(インハウス) → 客先常駐 → 制作会社、という流れです。今はWebディレクターとして、採用・面接する側にもいます(これまで30人ほど)。
先に結論をお伝えすると、会社のタイプで決まることって、思っているよりずっと少ないです。残業も年収も、タイプではなく会社ごとに変わります。
じゃあ何が変わるのか。ひとことで言えば「誰の意向で仕事が決まるか」だと思います。
この記事では、3つのタイプそれぞれの実際の働き方と、求人票では見えにくい客先常駐の話、そして入る前に確認しておくことを、採用側の視点も交えてお話しします。
Web業界の転職先は、大きく3タイプある
まず全体像から。Web業界の会社は、ざっくり3つに分けられます。
| 制作会社(受託) | 事業会社(インハウス) | 客先常駐 | |
|---|---|---|---|
| 誰のためにつくるか | クライアント | 自社 | 常駐先の会社 |
| ゴール | 納品して、クライアントの成果につながること | 自社の事業が伸びること | 常駐先の業務が回ること |
| スケジュール | クライアントの都合で動く | 自社の都合で決められる | 常駐先の都合で動く |
| 案件の数と期間 | 数が多く、サイクルが短い | 数は絞られ、長く付き合う | 担当が決まっていて長い |
| 成果の見え方 | 案件ごとに区切りがつく | 積み上がるが、すぐには見えにくい | 常駐先の評価に左右される |
| 自分で決められる範囲 | 狭い | 比較的広い | 狭い |
3つ目の客先常駐は、求人サイトの職種欄からは読み取りにくいことがあります。でもWeb業界では普通にある働き方です。僕はここで痛い目を見たので、あとでじっくり書きますね。
制作会社(受託)で働くとどうなるか
案件の数とスピードが違う
以前いた制作会社では、医療系のサイトを中心に、年100件近くの案件を担当していました。デザインからコーディング、仕様書の作成まで自分で回していく感じです。
1件あたりのサイクルは1ヶ月半から2ヶ月ほど。つまり、常に16件くらいを同時に抱えている状態でした。
食べ物にたとえるなら、制作会社は色んなメニューがあるファミレスだと思っています。和洋中様々なメニューを出し続けるので、手は早くなります。そのかわり、1つの料理をじっくり育てる時間はありません。
ただ、制作会社ならどこでもいろんな業種に触れられるかというと、そうとも限りません。
今いる会社も制作会社ですが、基本的には1社のクライアントを中心に対応しています。同じ受託でも、幅広く数をこなす会社と、特定のクライアントに深く入る会社があります。
このあたりは求人票の「クライアント」の書き方や、面接での質問で確認しておきたいところです。
忙しくなるタイミングは、だいたい決まっている
「制作会社は残業が多い」というイメージ、ありますよね。
ただ僕の場合は、どの会社でもほぼ定時で帰れていました。以前いた制作会社では、周りが遅くまで残っているなかで、僕だけ効率よく回して先に帰っていた時期もあります笑
もちろん忙しい時期はあります。ただ、それは年中ではなく、だいたい決まったタイミングで来ました。
- 以前いた制作会社:3月など、期が変わる直前の月
- 今の会社:長期休暇の前
- テレワークだと、終業後に急ぎの対応が入ることもたまにあります
なので「制作会社だからきつい」と限りません。
忙しさを決めるのは会社のタイプではなく、自分が入る会社がどんな事業を持ち、どんなクライアントを抱えているかだと思っています。
クライアントの意向が優先される
制作会社でいちばん大きいのは、クライアントの意向です。
自分がいいと思った案でも、クライアントの意向や予算で通らないことは普通にあります。あくまで相手のためにつくる仕事なので、全部を自分の思うようには進められません。
向いている人・しんどい人
- 向いている人:いろんな業種・いろんな案件に触れたい人。手を動かして数をこなしたい人
- しんどい人:1つのサービスにじっくり関わりたい人。自分の裁量で決めたい人
事業会社(インハウス)で働くとどうなるか
1つの事業に深く関わる。しかも守備範囲が広い
以前いた事業会社では、自社ECサイトの改修から、楽天市場・ヤフーショッピングの運用、メルマガ、広告バナーの制作まで担当していました。
さらに、新聞に載せる広告や、商品の化粧箱といった紙のデザインも作っていました。Webと紙を横断できたのは、制作会社にはなかった面白さです。
先ほどのたとえで言えば、事業会社は自分の店を持つ側です。メニューは限られますが、そのメニューを育てていく仕事になります。
ある程度は、自分で決められる
もちろん社長や上の考えはありますが、制作会社に比べれば「自分で責任を持って選ぶ」余地は広いと思います。
僕がもう一度27歳に戻れるなら事業会社を選ぶと思っているのですが、その理由もここにあります(これは最後にもう少し書きますね)。
「ユーザーの声が直接届く」は、僕は実感できませんでした
事業会社のメリットとして「つくったものへの反応が直接返ってくる」とよく紹介されています。
ただ、僕自身はあまり実感がありませんでした・・・。
新聞に掲載する広告を作ったときは、たしかに「多くの人に見てもらえるんだな」という感覚はありました。でも、だからといって「あのデザイン良かったですよ」と誰かに言われるわけでもないんですよね。
むしろ、直接の反応をもらえたのは制作会社のほうでした。納品したあとにクライアントから「良かったです」と言ってもらえることがあって、そこは素直にうれしかったです。相手の顔が見えるぶん、反応もまっすぐ返ってきます。
反応が届くかどうかは、会社のタイプというより、誰と仕事をするかで決まるのかもしれません。事業会社だから届く、というものでもないと思っています。
「インハウスはつまらない」は、タイプの問題ではない
これもネットでよく見かける話ですが、僕は事業会社にいた期間が短かったこともあって、飽きるところまではいきませんでした。
むしろ飽きが来たのは制作会社のほうです。同じ会社に5年ほどいて、気づけば毎日が同じことの繰り返しになっていました。
このとき何を考えて動いたかは、デザイナーからディレクターを選んだ理由を書いた記事にまとめています。
同じ仕事をルーティンで続けていれば、制作会社でも事業会社でも物足りなくなります。つまらなくなるかどうかは、会社のタイプではなく、そこで何年、どんな任され方をするかの問題だと思っています。
見落とされがちな3つ目、客先常駐
比較記事ではあまり触れられない話ですが、客先常駐となる場合もあります。
僕は、入る前に分かっていませんでした
以前いた会社では、クライアント先に常駐して、複数サイトの運用ディレクションを担当していました。
ただ、入社前からそう決まっていたわけではありません。前任者の交代で急遽そうなった、という異例の経緯でした。しかも常駐先で評価されてしまったことで、今度は戻しづらくなってしまったらしいです。
こちらとしては知ったことではありませんし、それなら給与に反映してほしかったのですが・・・。
常駐かどうかは、事前に確認できる
僕のケースは例外的だったにせよ、常駐が中心の会社かどうかは、事前に見抜けます。
- 求人票に「客先常駐」と書かれている場合がある
- エージェント経由なら、その会社が常駐中心かどうかを事前に共有してもらえる
特に後者は効きます。求人票だけでは分からない働き方の実態を確認してもらえるのは、エージェントを使う大きなメリットのひとつです。
エージェントの選び方はWebディレクター転職のエージェント選びをまとめた記事に書いたので、あわせて読んでみてください。

僕が常駐をきっかけに転職した理由
もともと内勤を希望して入った会社でした。それが、会社の都合でずっと常駐のまま。常駐先での働き方も、希望していたものとは違いました。
そこにコロナ禍が重なります。出勤そのものが不安な状況でも、常駐先の方針に従うしかなく、出社を続けることになりました。
さらに、評価制度がころころ変わるのに、記入させられた評価が給与に反映されない。コロナで収益が落ちたことで、固定だった賞与もカットされました。
このあたりが重なって、転職を決めました。今の会社を選んだ決め手が「テレワークができること」だったのは、この経験が大きいです。
それでも、常駐で良かったこともあります
悪いことばかり書きましたが、常駐には常駐の良さもありました。
- 契約で勤務時間が決まっていたので、ほぼ確実に定時で帰れた
- 規模の大きい案件だったので、それまで小さい案件ばかり回していた自分には良い経験になった
- 対応が評価されて、追加のサイト運用も任せてもらえるようになった
なので「常駐=ハズレ」ではありません。合うか合わないかの問題で、僕の場合は希望する働き方と噛み合わなかった、ということです。
タイプでは決まらないもの|残業・年収・ホワイトさ
ここまで読んで、そろそろ気づいた方もいるかもしれません。
会社のタイプで説明できることって、意外と少ないんですよね。
残業は「会社と事業」で決まる
さきほど書いたとおり、僕はどのタイプの会社でもほぼ定時で帰れていました。逆に、常駐先のほうが時間はきっちりしていたくらいです。
残業が多いかどうかは、タイプではなく、その会社が抱えている事業と案件の性質で決まります。
年収も、タイプより会社ごと
年収の傾向についても「事業会社のほうが高くなりやすい」とよく言われます。ただ僕の実感としては、タイプよりも会社ごとの差のほうがずっと大きいです。
参考までに、僕の実際の動きを書いておきますね。
- 27歳・最初の転職の前:年収320万
- 1回目の転職:月給は据え置き。ただし賞与が2ヶ月分出るようになり、年50万ほど増
- 2回目の転職:70万ほど増
- 3回目の転職:入社時は据え置き。そこから年々増えて、今は150万弱ほど増えて590万前後
見てのとおり、上がり方はバラバラです。制作会社から事業会社に移った1回目より、常駐の会社から制作会社に移った3回目のほうがずっと伸びました。タイプの組み合わせでは説明できないんですよね。
自分の相場観をつかむ方法は、未経験からWebディレクターを目指す転職ロードマップの市場価値の章にまとめています。

だからこそ、入る前に確認する
タイプで決まらないなら、会社ごとに確かめるしかありません。僕がやっている方法は2つです。
口コミは「求人票に書いていないこと」を見る
転職会議やOpenWorkなどの口コミサイトは、僕も毎回見ています。
ただ、使い方には線引きがあります。僕が見ているのは、エージェントからの求人情報では分からない部分です。
- 会社の雰囲気
- 入社後のギャップ
- ワークライフバランス
逆に年収については、口コミよりエージェントからもらう求人情報に目を通していました。あくまで口コミはダブルチェック、という位置づけですね。
常駐の有無は、求人票とエージェントの両方で
これは繰り返しになりますが、働き方に関わる話なので、面接の前に潰しておきたいところです。求人票を読んだうえで、エージェントにも確認してもらうと確実です。
【採用側】タイプを跨いだ転職は不利になる?
「事業会社から制作会社に移るのは珍しい」「不利になるのでは」と心配する人もいます。
僕は今、制作会社で採用に関わっていますが、そこで有利になることも不利になることもありません。
見ているのは、これまでどういう仕事をしてきたかです。会社のタイプではなく、任された範囲と、そこで何をやってきたか。ここが募集しているポジションと噛み合っているかどうかで判断しています。
ただ、事業会社を狙うときは事情が違うかもしれません。
僕自身、制作会社にいた頃に事業会社へ応募して、通らなかったことのほうが多かったです・・・。
これが「制作会社出身だから不利」なのか、単に「求人の枠が少ないから」なのかは、正確なところは分かりません。そもそも事業会社の募集は数が少ないので、比較しづらいんですよね。ただ、制作会社に応募したときよりは決まりにくかった、というのが体感です。
なので事業会社を狙うなら、枠が少ない前提で、早めに動き出すくらいでちょうどいいと思っています。
いずれにしても、見られているのはタイプではなく中身です。スキルのマッチをどう見られるかは、Webディレクターのスキルと資格について書いた記事で詳しく書いています。タイプを気にするより、こちらを整理しておくほうが効きます。
結局、どう選べばいいか
会社のタイプで変わるのは、働く時間でも年収でもなく「誰の意向で仕事が決まるか」です。
- クライアントの意向で決まるのが、制作会社
- 自社の意向で決まるのが、事業会社
- 常駐先の意向で決まるのが、客先常駐
いろんな案件に触れて経験を広げたい時期なら制作会社。自分で決められる範囲を広げたいなら事業会社。この軸で選ぶと、入ってからのギャップが小さくなると思っています。
ちなみに僕が今27歳に戻れるとしたら、事業会社を選びます。制作会社だとどうしてもクライアントの意向があって、全部を自分の思うようには進められません。事業会社にも社長や周囲の部署の考えはありますが、ある程度は自分で責任を持って決められると思っているからです。
ただ、これには但し書きが付きます。僕が事業会社にいたのは1年半ほどで、会社の早期退職の話が出て終わってしまいました。だから「その先」を実際には見られていないんです・・・。そこは差し引いて受け取ってください。
そもそも職種の方向で迷っている段階なら、会社選びより先にそちらです。デザイナーからディレクターを選んだ理由を書いた記事を読んでみてください。ディレクターのきつさが気になるなら、未経験のWebディレクターはきついのかをまとめた記事もあわせてどうぞ。


まとめ
- Web業界の転職先は、制作会社(受託)・事業会社(インハウス)・客先常駐の3タイプ
- 残業も年収もホワイトさも、タイプではなく会社ごとに決まる
- タイプで変わるのは「誰の意向で仕事が決まるか」
- 客先常駐は求人票では見えにくい。求人票とエージェントの両方で確認する
- 口コミは雰囲気・入社後のギャップ・ワークライフバランスを見る。年収はエージェントの求人情報で確認する
- 制作会社の採用では、タイプを跨いでも有利にも不利にもならない。見ているのは何をしてきたか
- ただし事業会社は募集の枠自体が少なく、僕が応募したときは通らないことのほうが多かった
会社のタイプは、求人票を眺めているだけだと決められません。でも、そこで止まる必要はないんですよね。働き方の実態を確認してもらえるのは、エージェントを使う一番のメリットだと思っています。
気になる会社が見つかったら、Webディレクター転職のエージェント選びの記事を参考に、まずは1〜2社に相談するところから始めてみてください。

